稲田姫物語 高天原編 オロチ退治前日の話 その11。

めっちゃ遅れました、すみません・・・(´・ω・`)。


本日も稲田姫物語の続きです。




(また癇癪を起こしてしまった・・・)

アマテラスの「眼」を破壊してしまったスサノオは大きな溜息をついた。

「眼」があった場所には、いまや夕陽しかない。

スサノオはその夕陽を見て思う。

太陽神。

その響きに憧れが無いと言えば嘘になる。

しかし己にその資格があるのかと問えば、答えは否だ。

今はクシナダが側に居て、ようやく一人で立っている様な状態だ。

アマテラスとツクヨミには、己がクシナダを護ると言った。

だが、それは逆であった。

実際にはスサノオがクシナダに護って貰っている状態なのだ。

その様な状態で太陽神など務まるはずが無い。

(クシナダ姫には己の立場を自覚せよ、覚悟を決めよと偉そうに言ったが、自覚も覚悟も無いのは己の方だ)

スサノオは己を恥じた。

(一刻も早くクシナダ姫に認めて貰える様な男にならねば)

スサノオはクシナダの手をしっかりと握り直すと、沈みゆく夕陽に誓った。



クシナダは己の手を握る力の変化に気がつき、スサノオを見やる。

先程までとは目線の高さが違う様だ。

(終わったのかもしれない・・・)

クシナダはスサノオの手の具合が気になり、思い切って声を掛けた。

「スサノオノミコト・・・」

スサノオはその声に反応しクシナダを見た。

その顔には複雑な表情が浮かんでいた。

(何かあったのかしら・・・。でもきっと、私の出る幕は無い・・・)

そう判断したクシナダは、質問したい気持ちを抑え言った。

「お帰りなさいませ」

するとスサノオは少々驚いた様な表情を浮かべた後に、

「ただ今戻りました、姫君」

と、少々照れた様子を見せながら言った。

(よかった・・・、笑っていらっしゃる)

クシナダはホッと胸をなでおろした。



次の瞬間、スサノオはふと血の臭いに気がついた。

血の臭いの出所を確認しようとクシナダの方を見やると、繋いだクシナダの手が真っ赤に染まっているではないか。

その瞬間、スサノオは身体中の血の気が引いていくのを感じた。

(なんだこの血は・・・)

スサノオは繋いでいたクシナダの手を離すとその手首を掴んだ。

そして血に染まったクシナダの手を見ながら、鬼の様な形相で叫んだ。

「どうしたのだ!この血は!」

「えっ?血?きゃっ!」

スサノオのあまりの剣幕に驚いたクシナダが言い淀んでいると、突然クシナダの身体が宙に浮いた。

スサノオはクシナダを両腕で軽々と抱きかかえると、屋敷に向かって大股で歩き出した。

それは普通の男が走っているのと同じ速さだ。

クシナダは突然頭の位置が変わった為か少々頭がクラクラし、うまく話す事が出来なかった。

「ま、待って・・・」

クシナダはそれでもなんとか下に降りようと、スサノオの両腕の中で手足をばたつかせた。

「手の傷が開いちゃう、降ろして!」

それでもスサノオはクシナダの訴えを聞かずにひたすら歩き続けた。

クシナダはスサノオの胸を押して必死に訴える。

「スサノオノミコト!傷が!」

するとスサノオはピタリと歩みを止めると、クシナダに向かって大声で叫んだ。

「おとなしく抱かれてろ!」

クシナダはポカンとした様子でスサノオの顔を見つめた。

そして頬を赤らめると抵抗をするのをやめた。

スサノオはそれを確認すると再び歩み始めた。

二人は結局そのままで屋敷へ到着した。



「誰か!誰かおらぬか!」

スサノオはクシナダを両腕に抱きかかえたまま、歩みを止めずに屋敷の中へ入る。

屋敷の中は警備の者とごく少人数の世話をする者を残し、皆避難先へ移動していた為、夕餉時の屋敷内にすぐさま対応出来る者はいなかった。

スサノオはチッと舌打ちをすると、クシナダに聞いた。

「クシナダ、酒はどこだ!傷を洗うぞ!」

「あ、あちらにございます」

クシナダは怪我をした際に使用する酒のある場所へと案内した。

その場所へ辿り着くとスサノオは恭しくクシナダを降ろし、今度は酒を浸す布を探し始めた。

「布はどこにある!」

「あ、こちらに・・・」

スサノオは清潔な布をクシナダから受け取ると、左手に持った布に勢い良く酒をぶち掛けた。

その瞬間己の左手に激痛が走り、スサノオは思わず布を落としてしまった。

「アッ・・・!」

スサノオは声にならぬ声を上げると、右手で左手首を掴んだ。

(何だこの痛みは・・・!早くクシナダの手当てをしなければ・・・)

スサノオが痛みに耐えているとクシナダは落ち着いた様子で布を拾い、スサノオの目の前で血にまみれた己の右手を拭いた。

そして血を綺麗に拭き取ったその手をスサノオの顔の前に持って行くと、クルクルと回転させて見せた。

「はい!私の手には傷がございません!」

「え・・・?」

それからクシナダは新しい布に酒を浸すと、それをスサノオに見せた。

「手当てが必要なのはスサノオノミコトです!」

クシナダはスサノオの左手首をむんずと掴んだ。

「さぁ!お座りくださいませ!」

「・・・」

スサノオはクシナダの指示に素直に従った。

クシナダはスサノオの正面に座ると、丁寧に傷を消毒していった。

「アッ!」

スサノオが手を引っ込めようとするのをなんとか抑えながら、クシナダはスサノオの血を拭いていく。

「スサノオノミコト?」

「はい・・・」

大男はその身を小さく丸めてクシナダの話を待った。

「心配してくださるのはとても嬉しいのですけど、私の話もちゃんと聞いてくださいませ」

「はい・・・」

クシナダは消毒を終えると、今度は細く織り上げた布をスサノオの手にきつく巻いていった。

「ツ・・・」

「誰よりも大切な貴方様の身体なのですから」

スサノオはその言葉を聞くと頬を染めたが、居住まいを正してクシナダに言った。

「私は貴女の身体の方が大切だ」

クシナダは手を一瞬止めると、再び布を巻いていった。

「・・・怪我をしている方が優先です」

「まさか己が怪我をしているとは思いも寄らなかったのだよ」

クシナダは少々呆れながら言った。

「痛みで気がついてくださいませ」

「貴女の血まみれの手を見て気が動転してしまい、痛みを全く感じなかったのだ」

クシナダは顔が赤く染まっていくのを隠す様に立ち上がると、己の服についたスサノオの血を見せて言った。

「服が血まみれにございます」

「あー・・・、これは済まない事をした。なんとお詫びして良いやら・・・」

スサノオはクシナダを見上げながら申し訳なさそうに言う。

「それでしたら、これからはご自身の事を優先してくださいませ」

スサノオは眉間に皺を寄せた。

「うーん・・・、それは難しいかな・・・」

「もう、それでは駄目です!」

クシナダは唇を突き出して抗議をする。

するとスサノオは人差し指を上に向けて言った。

「それではこれはどうだ?お互いがお互いの事をまず考える」

「でもスサノオノミコトは私の話を聞いてくださいませんでしたよ?」

スサノオは困った様に首を傾げた。

大男のその様子を見たクシナダは思わず笑ってしまった。

そして再びスサノオの前に座ると微笑みながら言った。

「それにしても怪我をしたのが左手で良うございました」

「何でだね?」

「スサノオノミコトは右手で剣を握られるでしょう?」

「あぁ、剣を扱う者は両手で剣を扱える様に訓練をしているのだよ。何も問題は無い」

「えっ?本当にございますか?」

「そうだよ、ほら。アッ!」

スサノオはうっかり怪我をした左手で剣を持ち上げてしまい、その重さで傷口が開いてしまった。

その痛みで危うく落としそうになった剣を咄嗟に右手で受け止めると、スサノオはいかにも「しまった」という表情を浮かべ、上目遣いでクシナダを見た。

クシナダは手を腰に当て、「それ見たことか」とでも言いたげな表情を浮かべながらスサノオを見ていた。

「・・・申し訳ない・・・」

スサノオはしょんぼりとした様子で言った。

クシナダはその大男の様子に笑いがこぼれ落ちそうになるのを堪えながら、威厳のある振りをしながら言った。

「わたくしはまだ何も言っておりません!」



下働きの者達は夕餉を出す良い頃合いを計れず、物陰から二人のやり取りをニヤニヤしながらいつまでも見守っていた。


f0351853_03472924.jpg

画像の再利用。


スサノオとクシナダの出番はここまでです。

多分明日で終わります。


☆☆.。.:*・゚*:.。.☆☆.。.:*・゚*:.。.☆☆.。.:*・゚*:.。.☆☆.。.:*・゚*:.。.☆☆


musica 「スーさんの過保護っぷりがよく分かりますね」

スーさん 「・・・」

m 「そしてその性格がいまだに続いているという事実」

ス 「・・・」


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by garoumusica | 2016-02-12 05:34 | 稲田姫物語 | Comments(0)

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