カテゴリ:稲田姫物語( 41 )

稲田姫物語の続きです。




ヌイと水中で話している間に幾らか川下に流されていた様で、幸いにも炎の周りに集まっている連中はまだスサノオの存在は気づいていない。

スサノオは己の剣を置いている岩の周辺を確認する。

誰もいない。

幸い皆炎に注目し、岩の上のスサノオの剣にも気がついていないようだ。

(まずは剣まで辿り着く事だな…)

スサノオは目だけを水面から出し、そのまま音を立てぬよう細心の注意を払いながら水中を移動し始めた。

川面が浅くなるにつれ半ば這うようにして移動し、砂地へ辿り着くや否や足音を消して走り出した。

そして岩影目掛けて飛び込むと、音を立てぬよう回転しながら着地し、それと同時に素速く手を伸ばし愛用の剣を掴み取るとサッと岩影にその身を潜め、いつでも走り出せる様にと立てた片膝の上に剣を置いた。

これだけの動きをしてもスサノオは息ひとつ乱していない。

オロチ退治をした後でもまだまだ戦えそうだ。



スサノオは袂から妻櫛を取り出すと、無意識のうちにその唇を妻櫛に寄せる。

そして顔にかかる濡れた髪を乱暴に耳へと掛けると、妻櫛をそっと挿した。

(さて、これからどうしたものか…)

スサノオは腿に乗せていた剣を手に取り鞘を抜くと、刃を月の光の下で確認をした。

オロチを切り刻んだ剣の刃には欠けが多く出来ていたが、切っ先は辛うじて残っている。

だがこの刃では突くか叩く程度の攻撃しか出来まい。

それでもスサノオの力を持ってすればかなりの打撃を与える事は出来るだろうが、恐らく全ての者を攻撃するより先に剣が折れてしまうだろう。

愛用の剣を過信し、短剣しか用意しなかった己が腹立たしい。

短剣だけではなんとも心許無い…。

だが、今更後悔しても無駄だ。

(知恵を絞らねば…)

スサノオは正確な人数を把握する為に、こっそりと岩影から頭を出して様子を伺った。

70…、80…。

炎の加減で把握しにくいが、100は下らないかもしれない。

しかも武装している者に加え女子供も居る。

(部族総出か?)

スサノオは再び岩影に頭を隠した。

(多勢に無勢だ、効率良く攻撃を仕掛けねば…)

ポタポタと髪から滴り落ちてくる水滴を顎の下で拭う。

(考えろ、考えろ、考えろ…)

呪文の様に繰り返しながら、スサノオは髪から滴り落ちてくる水滴を再び顎の下で拭った。

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スサノオは炎の周りの者達の姿を思い描く。

あの者達の出で立ち、風貌、髪型…。

そして首を捻る。

(おかしい…)

どこか統一感を感じられない上に、アシナヅチに聞いたこの辺りに住む部族の特徴に当て嵌まらない者達がほとんどだ。

(彼奴らは何処からやって来たのだ?)

そしてスサノオの頭に真っ当な疑問が生まれた。

(川の中に居たとはいえ、これ程の人数の移動に気がつかないものか?)

それ程長い間、水中に潜っていた訳ではない。

だが気配を全く感じなかった…。

おまけにヌイも慌てている様子はなかった。

(何か引っ掛かる)

スサノオは考えながら無意識に妻櫛を指で優しく撫でる。

(何だ?この違和感は…)

眉間に皺を寄せながら考えていたスサノオだが、ふと己の指が無意識に妻櫛を撫でていた事に気がつくと、苦笑いを浮かべながら妻櫛を手に取った。

(意識せずに姫君を撫でていたとは…、かなりの重症だな)

スサノオは笑みを浮かべながらしばし妻櫛を見つめていたが、突然その笑みを消し、何かに気がついたかのような表情を浮かべた。

そして再び岩影から炎の周りに集まっている者達を見た。

男達の年齢はバラバラだが、ほぼ皆武装している。

女達はまだ乙女とも童女とも呼べる年齢の者達。

その童女達が今から侵略をしようかという集団の中に混じっているのは、明らかに不自然だ。

そして何より違和感を覚えずにはいられないのは、その風貌や服装が余りにも異なる点だ。

(まさか…)

スサノオは再び岩陰に身を隠し、その手の中の妻櫛をじっと見つめた。

そして目の前に広がる暗闇に視線を移すと小さく呟いた。

彼らの共通点を挙げるとするならば、それは恐らく、

「オロチの犠牲となった者達…」



(・v・)ノ(゚∀゚)ノ (゚д゚)ノ(´x`)ノ(゚_っ゚)ノ(・v・)ノ



それでは本日も良い一日を~。


時間が出来たので挿絵を描いてみました。

服を葦原中国風にするか高天原風にするか迷いましたが、追放された時の服をいまだに来ているという設定にしました。

あと爪の形がおかしいのは、剥がされた爪がようやくあそこまで伸びたよ!というイメージで描いたからです。

画廊musicaの微妙なこだわりでした。



次回の稲田姫物語は、まだ何も書いていないのでいつ載せるかは未定でっす(`・ω・´)+








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by garoumusica | 2018-01-09 05:00 | 稲田姫物語 | Comments(2)
『稲田姫物語 妖しき剣編』の続きです。

稲田姫物語 妖しき剣編 その1。



スサノオは後ろ手でヌイに手を振ると、そのまま振り返りもせずに岸辺を目指した。

その間、頭に浮かぶのは掌の中のクシナダの事だけだった。

(11…、まだ11だったのか…)

クシナダはその齢らしい幼さを微塵も感じさせなかった。

スサノオは初めてクシナダを見た時の事を思い出す。

ただひたすらまっすぐに、己の目を見つめ返して来たクシナダ。

凛とした佇まいでそこに在りながらも、それと同時に己が護らなければならぬと強く思わせる、その存在の儚さ。

それは全て、その境遇ゆえ。

今もこの目にありありと映るその姿が、余りにも美しく、そして悲しかった。

(私が強くあらねば、姫君は安心して弱さを出せまい。その齢らしい弱さを)

昨日赤子扱いをされた時に見せたクシナダの、その歳に不釣り合いな母の様な包容力を思い出す。

(今の弱い己のままでは…)



スサノオは川面が腰の辺りになった所で足を止めると、妻櫛を握る掌を胸の鼓動の上に置き、目を閉じた。

そして改めて誓う。

(姫君が安心して己を出せる様、私は強くなろう)

そのまましばし目を閉じていたスサノオだが、次の瞬間、全身の毛が逆立つ様な感覚を覚え、咄嗟に目元まで身を沈めた。

そして妻櫛を袂に入れると同時に腰に携えていた短剣を抜く。

先程まで穏やかに拍を刻んでいた胸が、今や早鐘を打っている。

水の中に居ながらも冷や汗が溢れ出るのが分かる程だ。

(何だ?この感覚は…)

スサノオは素早く辺りを見渡し、その原因を探る。

そして今だ煌々と燃え上がる二つの炎に目をやると、その明かりに照らされた大勢の人影を見つけた。

ここから確認出来るだけで、アシナヅチの部族の者達が皆戻って来たのではないかと錯覚する程の数だ。

(やはり炎に引き寄せられたか…)

スサノオはチッと小さく舌打ちをし、苦々しく呟いた。

「まるで虫だな」

それからちらりと月を見、その位置を確認する。

(夕餉の刻まで残っていた者達が此処まで戻って来るまで、今しばらく掛かるな…)

アシナヅチの部族の者達総てが居住地を長時間留守にする事は余りにも危険だと判断し、部族は幾つかに分けて退避させていた。

女子供と老人、そしてそれらを守る者達は最も遠く離れた安全な場所へ。

ある程度力のある者達は、月が山の頂に隠れる迄に居住地に戻れる場所へ。

そして見張りを兼ねた戦闘力の高い者達は、オロチ退治当日も刻限ギリギリまでスサノオと行動を共にし、辿り着ける場所まで退避。

そして狼煙を確認次第引き返すという手筈であったが、それでも山を幾つか超えている筈だから、残念ながら今しばらく援護は期待出来そうにない。




次回は年が明けてからです。

本日の本館ブログで、スーさんの後ろ姿の映ったピーターサイトの特集をしました。

良かったらご覧ください!


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それでは良いお年を~。










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by garoumusica | 2017-12-30 05:00 | 稲田姫物語 | Comments(0)
本日でヌイ君編はラストです。




ヌイはスサノオの放つその光を、眩しそうに目を細めて見つめていた。

スサノオの目に宿った光は、スサノオの意思の強さに比例するが如く輝きを増し、今やスサノオの肉体全体を包む迄になっていた。

しかし、その光を見つめるヌイの顔はどこか寂し気だ。

ヌイは先程迄その身に触れられる程近くに居たスサノオが、いや、実際には距離は変わっていないのだが、触れられぬ程遠くに行ってしまった様な気がしていた。

それはまさに、川の底から天の日を仰ぎ見ている時と同じ感覚だった。

本来であればスサノオは、川の底に住むちっぽけな存在である自分が言葉を交わす事など有り得ない、まさに天上の存在だ。

そんなスサノオに気安く接して貰い、簡単な助言をする機会を得、自分は少々勘違いをしていた…。

己の勘違いぶりに恥ずかしさを覚えたヌイは、スサノオを見つめながら少しずつ距離を取り始めた。



しかし次の瞬間、突然スサノオの腕がヌイの首を捉えたかと思うと、スサノオは一人で何やら納得したかの様な声を上げた。

『そうか!そういう事か!』

『なんだよいきなり!びっくりするじゃねぇかよ!』

驚きのあまりヌイはスサノオの腕の中で暴れ、悪態を吐く。

スサノオが光を放ち始めてからは、スサノオの思考がヌイに伝わらなくなっていた。

圧倒的な能力の違い。

理由はそれだけだった。

故にこのスサノオの突然の抱擁に、ヌイはただ戸惑うばかりだ。

『ハハハ!姉上にしてやられたな』

『だから何がだよ!』

ヌイは苛立ちを隠そうとせずに言った。

対して、スサノオはそんなヌイを気にする事なく言う。

『姉上の不可解な行動の理由だ。私は疑問を抱いていたのだ』

『疑問?』

『そうだ。姉上はなに故ヌイに箸を流す様頼んだのか。なに故ヌイに我々の会話を聞かせたのか』

『どうせ都合が良かっただけだろ!?都合がいい場所にたまたまおいらが住み着いてただけじゃねぇの!?』

ヌイは乱暴に言い放つ。

『…なんだ?ヌイ。随分と乱暴な言い草ではないか』

スサノオはヌイの苛立ちにたった今気が付いたと言わんばかりだ。

『そんなとこだろ…』

ヌイはスサノオの腕に捕まったまま、尾びれを大きく上下させる。

(どうせおいらなんて、高天原の連中からすれば便利な駒に過ぎねぇんだろう)

スサノオはヌイの苛立ちの理由に気が付く素振りも見せずに続けた。

『姉上はこの地に私の理解者を用意してくれたのだ』

その言葉を聞き、ヌイははたと動きを止め、スサノオの言葉を繰り返した。

『理解者?』

『そうだ』

『駒じゃなくて?』

『駒?何の駒だ?』

ヌイはスサノオの邪気の無いその鈍感さに呆れた。

(これだから育ちのいい奴ぁよ…)

『…なんでもねぇよ』

ヌイの溜息交じりの言葉に首を傾げながらも、スサノオは話を元に戻す。

『私の過去を知った上でも、現在の私の状況を知った上でも、何も変わらずに接してくれ、更には良き助言を与えてくれる存在。それを良き理解者と言うのだろう?』

スサノオの口から再び出たその言葉の意味をようやく理解したヌイは、思わずスサノオを振り返る。

『良き理解者?…それっておいらの事だよな?』

『そうだ』

『おいらがおめぇの…?』

(高天原の最高神の良き理解者が、おいらって言いてぇのか?こいつは…)

スサノオの言葉を信じられぬといった様子のヌイの目に、不思議そうな面持ちを浮かべたスサノオが映る。

『…違うであろうか?』

そう言うと、目の前の光り輝く大男は首を傾げた。

ヌイはそのスサノオの様子を呆然と見つめた後、それから思わず噴き出してしまった。

スサノオはそんなヌイの様子を理解出来ぬと言った様子で、茫然と見つめていた。



ヌイはスサノオの腕に捕まったままひとしきり笑い転げた後で言葉を発した。

『ばっか、おめぇそういうのは理解者って言うんじゃねぇよ』

『では何と言うと?』

『そりゃあおめぇ…』

ヌイはそこまで言うと一旦言葉を切り、そしてスサノオを再び振り返ると少々乱暴に言った。

『友って言うんじゃねぇの?』

その言葉は照れ隠し故の疑問形だった。

スサノオは驚いた様に目を見開くと、おそらく初めて発したと思われるその言葉を繰り返した。

『友…、友か…。姉上は私に初めての友を授けてくれたのか…』

スサノオはアマテラスの用意周到さ、そして面倒見の良さを改めて感じていた。

『えっ!?何?おめぇ、友達が出来たのって初めてなのかよ?』

『あ、あぁ…』

スサノオは思わず視線を外す。

『は〜…、おめぇのやんちゃぶりってそこまでだったのか…』

ヌイは心底呆れた様子で言った。

『人って変わるもんだなぁ…』

たった一人の憐れな乙女との出逢いでこの鼻つまみ者は改心し、そして誰にも真似出来ない光を放つ迄になった。

(それもこれも、この姫さん故か…)

ヌイはスサノオの手の中にある妻櫛をしばらく見つめていたが、ハッと思い出したかの様に身を固くした。



ヌイのその只ならぬ様子にスサノオは思わず声を掛けた。

『どうしたヌイ』

ヌイはその言葉に応える様に、ためらいがちに口を開く。

『あー…』

ヌイは言い淀んだ後しばらく口を噤んだが、意を決した様に再び口を開いた。

『あー…、これから初夜を迎えるであろうお二人にとって、重要な事柄をお伝えします』

『ん?何だヌイ、妙に改まって』

スサノオは「初夜」という言葉の意味を分かっていない様子だ。

『えー…、この地では乙女が子を宿す行為を致すのは、その身に月の物が訪れてからという事が通例となっています』

『あ、えっ!?子!?』

スサノオはヌイの言わんとする事を今だ掴めてはいない。

ヌイはそんなスサノオの様子を見、溜息を吐いた。

『スサノオよぉ、おめぇはこれからクシナダとの初夜を迎える。部族の者は今誰もいねぇ。今夜はおめぇのやりたい放題だ』

スサノオはハッと気がつく。

(まさか…)

そんなスサノオの肩をヌイは黙って掴むと、おもむろに口を開いた。

『姫さんはその定め故に、その歳よりも大人びて見えたかもしれねぇが…』

ヌイは言葉をここで一旦切り、溜息を吐いた。

そしてスサノオの目を見つめながら言った。

『スサノオ、残念だが姫さんはまだ童女だ…。おめぇはまだ姫さんとまぐわえねぇよ』



『なっ…!』

スサノオはその身を硬くした。

少なからず衝撃を受けた様子だ。

『ちなみに歳の頃は11だ』

『11…』

『ちなみにスサノオ、おめぇは幾つだ?』

『21です…』

スサノオは何故か丁寧に答えた。

『そうか…。知らなかったとは言え、スサノオ、随分と幼い娘に求愛したものだな』

『…』

『その年齢差は年若な叔父と言ったところか…』

『それはさすがに無いだろう。兄と言ったところでは?』

スサノオは慌てて訂正を促す。

『スサノオ、おめぇの兄ちゃんの年は幾つだ?』

『同い年です…』

『ちょっと厚かましいんじゃねぇの?おめぇ』

『…』

二人の間に嫌な沈黙が流れた。



ヌイはちらりとスサノオを盗み見る。

その表情には困惑している様子がありありと伺えた。

ヌイは内心、面白くてしょうがない。

(からかい甲斐のある奴だ)

そしてヌイは込み上げる笑いをなんとか堪えると、呼吸を整え再び口を開いた。

『権力の有る者ん中には、月の物が来ていない童女を穢す事を趣味としている者も少なくねぇ。だからおいらはおめぇが姫さんに何をしようと止めはしねぇ…』

「私はそんなっ…!」

スサノオは思わず水中で声を上げてしまい、結果として大量の水を気管に送り込んだ。

そして慌てて水面に顔を出すと、盛大に咽せ始める。

「懲りねぇなぁ、スサノオはよぉ」

その様子をヌイは面白そうにニヤニヤと笑いながら眺めていたが、不意に岸辺を見つめ目を凝らす。

「あれは…」

ヌイは何かを見つけた様子で呟くと、スサノオを振り返った。

ようやく咳が収まりかけたスサノオは、岸辺の変化に気づいていない。

ヌイは慌ててスサノオを水の中に引き摺り込んだ。

『おいおい、ヌイ。一体何事だ?』

『…いや、そろそろスサノオは屋敷に戻った方がいい頃合いだなぁと思ってよ』

『ん?…あぁ、そうだな』

スサノオは先程の会話を思い出し、切れの悪い返事をする。

『じゃあスサノオ、この川の主として礼を言う。姫さんを救ってくれてありがとよ』

スサノオは礼を言うヌイの様子を見、フッと笑った。

『何だ?改めて』

『川の主として当然の事だ。あー、今夜は部族の集落の中で二人きりという事で、蛇の生殺しって奴だろうけどよぉ、まぁゆっくり休めよ』

ヌイはスサノオの肩をポンと叩く。

スサノオはその精悍な顔付きに複雑な表情を浮かべると、何も言わずにヌイに背を向け、その背中越しに手を振った。



ヌイは黙ってその背を見送る。

『一難去ってまた一難、か…。スサノオもなかなか落ち着けねぇなぁ…』

と呟くと、スサノオとは反対の方向を向いた。

光の主が去った後の川底には、いつもの月夜の風景が広がっているはずだった。

が、ヌイはいつもとは違う何かを感じていた。

(何だ…?)

ヌイはその違和感の元を探す。

(何かが違う、何かが違う…)

ヌイはその場でくるくると回っていると、ふと自分の尾びれが目に入った。

『あっ!』

ヌイはようやく、スサノオほどではないものの、自分自身の身体が仄かに光り輝いている事に気が付いた。

その光はまるでスサノオのそれを彷彿とさせるものだった。

ヌイは自分がスサノオに言った言葉を思い出した。

(日の神は周りを照らす。その内から放たれる光で皆を照らす。

だが光はその反面、影を作る。光に近づけば近づくほどその影は濃くなる)

そしてヌイは先程自分が抱いた劣等感を思い出した。

スサノオが光り輝けば輝く程、自分が抱いた劣等感。

それはスサノオが放つ光故だったのだ…。

(参ったな…、これ程迄のものだったのか…)

ヌイは内心舌を巻く。

しかし、自分の光輝く腕を見ながらこうも思う。

(影を作る間も無く近くにいて、共に光り輝く)

スサノオの光には、その光を浴びた者をも輝かせる力がある様だ。

それはおそらく、その光が生み出す劣等感に耐える事が出来ればだろうが…。

『すべてはスサノオ自身が鍵という訳だな…』

ヌイは昼間の日の光を思い出し、スサノオを思う。

『スサノオよ、天に輝く日は孤独だ…』



○・v・◎・v・●・v・○・v・◎・v・●・v・○・v・◎



それでは本日も良い一日を~。

musica 「このままでは旅に出る迄に妖しき剣編を終わらせる事が出来ないという事で、大慌てで文章にしました。なのでいつも以上に文章に問題があってもそこはスルーで☆」

スーさん 「(溜息)」




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by garoumusica | 2016-09-30 05:13 | 稲田姫物語 | Comments(0)
なんだかちょっとばたばたしていたので、前回から間が空いてしまいました。




『いいか?スサノオ。おめぇは強い。誰よりも強い。ただおめぇは、自分がどんな時に強くなれるのか、気がついてねぇ』

『どんな時に?』

スサノオはヌイの言わんとする事がいまいち掴めぬと言った様子で繰り返した。

ヌイはスサノオの肩に置いた手を離すと、いきなり水中でくるりと後ろ向きに一回転をした。

そしてその唐突な行動に驚きの色を隠せないスサノオの目を見つめると、少々得意げに言った。

『おいら、おめぇを見ていて気がついたんだ。スサノオ、おめぇは誰かの為に何かをする時、無条件に強くなるんだって』

そう告げるヌイは何故か嬉しげだった。

その様子は、まるで自分しか知らない秘密をそっと打ち明ける子供の様であった。

『誰かの為に…』

『そうだ。姫さんの為に、アシナヅチの為に、アシナヅチの部族の為に…。おめぇはそういう時に己を無にして動ていた。ただ相手の為を思ってよ』

そのヌイの言葉に、スサノオはこの地に辿り着いてからの己を振り返った。

クシナダに出会いその命を救う為に、ただただ己の成すべき事をしていた事。

そのうちにアシナヅチやその部族の者達から質問を受ける様になり、持てる知識を総動員し少しでも役に立てたらと思い対応してきた事。

『おめぇが高天原でやんちゃしてたっていうのはよ、おめぇが自分の為だけに生きていたからじゃねぇの?』

その瞬間、スサノオはハッと気が付いたような表情を浮かべた。

確かにこの地に来て皆の為に動くようになってからは、高天原でひたすら我を前面に出していた頃とは異なる満足感があった。

ただただ己の欲の為だけに生きていたあの頃とは違って…。



『おめぇは誰かの為になら強くなれる男だ』

ヌイはスサノオの目を見つめながら続ける。

『スサノオ、姫さんは生き残ったこれからが正念場だ』

『これからが?』

『あぁ』

ヌイは眉間に皺を寄せて言った。

『あの娘は今迄ただ死ぬ為だけに生きて来た。だからこそ先に死んだ姉達に対して何の後ろめたさも無かった』

スサノオは握っていた掌を開くと、その手の中の妻櫛をじっと見つめた。

『だが生き残ったこれからは違う。明るい未来に照らされれば照らされる程、その心に影が生まれる』

『…』

『だからスサノオ、おめぇは姫さんの為に強くなれ。心を強く持て。じゃねぇと姫さんを支えられねぇ』

スサノオは顔を上げるとヌイを見つめた。

『姫君の為に…』

『そうだ。おめぇ、日の神なんだろう?』



「ヌイ!」

スサノオは思わず声を上げると、その顔に焦りの色を浮かべた。

(姉上はあの時周囲に結界を張っていなかったのか!?

己でさえ信じられぬ事を他者に、ましてはこの地の者に知られてしまうとは…)

『あー、別においら見たくて見た訳じゃねぇよ?おめぇがおいらの庭で姉弟喧嘩なんかおっ始めるのがいけねぇんだ』

ヌイは耳の後ろをポリポリと掻きながら弁解した。

『ヌイ…』

スサノオはヌイの耳聡さに呆れつつも、再びアマテラスに疑問を抱かずにはいられなかった。

(なに故姉上は結界を張らずにあの様な会話をしたのか…)

そしてふいに気が付く。

(まるでヌイにわざと話を聞かせたかの様ではないか)



『安心しな、誰にも言わねぇからよぉ。それにおいら自身はおめぇが何者でも気にしねぇからよ』

スサノオの疑惑を知ってか知らでか、ヌイはその事には触れずに会話を続けた。

『ヌイ…』

スサノオは困惑しつつも、何も言わぬと言うヌイの言葉にホッ胸を撫で下ろした。

『だけれども、おいらが誰にも言わなくっても、日の神は周りを照らす。おめぇがそうしようと思っても思わなくっても、その内から放たれる光で皆を照らす。その光を最も受けるのはおめぇの最も近くに居るだろう姫さん、クシナダだ』

スサノオは思わず手の中の妻櫛をぎゅっと握り締める。

『そして光はその反面、影を作る。おめぇが姫さんの側に居れば居る程、姫さんは濃い影を作る。光に近づけば近づくほどその影は濃くなるからよぉ』

『それが一体何だというのだ?』

スサノオはヌイが言わんとする事を推し量れずにいた。

『さっき生き残った姫さんの心に影が生まれると言っただろう?影は影を産む。いや、引き寄せると言った方がいいかもしれねぇな。日の神のおめぇが姫さんの側に居ると、姫さんは自分の産み出した影とおめぇが生み出した影に飲み込まれちまうだろうよ』



『そんな・・・』

スサノオはあまりの事に絶句した。

(己の存在が姫君に取っては毒となると言うのか?)

スサノオは再びヌイに問う。

『では私はどうすれば良いのと言うのだ?姫君に近寄らぬ方が姫君の為となると?』

ヌイは2度3度首を横に振ると、その顔に笑みを浮かべながら言った。

『違うよ、そんな事じゃねぇ。なに、簡単な事だ。姫さんが影に飲まれそうになる度に、おめぇが引き上げてやりゃあいいじゃねぇか』

『引き上げる…』

『おめぇの高さまで引き上げてやれ、スサノオ。影を作る間も無ぇって程に近くにいて、共に光り輝きゃあいいんだ』

瞬きもせずにスサノオは微笑むヌイの顔を見つめていた。

『でも、その為にはおめぇは強くねぇといけねぇ。どんな時でもおめぇの中にブレねぇ軸を持って、姫さんを支えてやらなきゃいけねぇ。だからスサノオ、おめぇは過去に縛られてる暇は無ぇんだ、姫さんを助けちまった今となっちゃあよ』

そこまで言うとヌイは一拍置き、それからスサノオを睨みつけて言った。

『だからスサノオ、姫さんの為に前を向け』

『姫君の為に…』

そう呟きながらスサノオはクシナダを見つめた。

そして再びその大きな掌でクシナダを優しく包み込むと、真っ直ぐに前を向き、今度は誓いを立てるかの如く力強く言葉を放った。

『姫君の為に』

そのスサノオの目には、今迄見る事の出来なかった強い光を宿していた。

その光はまさしく、日の神のそれであった。



(゚д゚)ノ(´x`)ノ(゚_っ゚)ノ(・v・)ノ(゚∀゚)ノ (゚д゚)ノ(´x`)ノ(゚_っ゚)ノ(・v・)ノ



それでは本日も良い一日を~。

musica 「あー――、今日は頑張ったのにヌイ君編が終わらなかったーーー。スーさんちょっと長過ぎですよーーー」

スーさん 「でもようやくスサノオの目が開いた」

m 「スサノオ君の覚醒が見られましたね」

ス 「自分の為に生きやりがいを見つけられなかった者が、他者の為に生きやりがいを見つけた」

m 「漢(おとこ)になりましたねw」




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by garoumusica | 2016-09-29 05:05 | 稲田姫物語 | Comments(0)
スーさんに、

「妖しき剣編を終わらずして、出雲に足を入れられると思うかね?」

と言われ、泣く泣く稲田物語を文字にしています、画廊musicaです。

アレですよ。

高天原編の様にポンポンポンポン話が進んでくれれば、書いている方も楽しい訳ですが、如何せんスサノオがうじうじしているので、後頭部を殴りたくなるほどイラッとする訳です。





『…』

スサノオは二の句が継げず、思わず黙り込んでしまった。

いや、黙り込まずにはいられなかった。

ヌイの言う事はいちいち最もだ。

最もなのだが、己は一体どうすれば良いのか皆目見当もつかない…。

スサノオはほとほと困り果てたといった様子で、その凛々しい眉をハの字に下げた。

『私は一体どうすれば良いのだ…』

そしてヌイの肩を掴み直すとおもむろに頭を下げ、スサノオはヌイに教えを乞うた。

『ヌイ、どうか私に知恵を授けてくれ』



ヌイは頭を下げるスサノオを、呆気にとられた様子で見ていた。

目の前にいるこの名実共に優れた大男。

その大男が、自分の様なちっぽけな存在に頭を下げて教えを乞うとは・・・。

なんと潔良く、なんと気持ちの良い男だろうか…。

ヌイはこの大男の度量の大きさに舌を巻きながらも、スサノオに応えようと言葉を選んで話し始めた。



『簡単な事じゃねぇか、スサノオ。後悔してんだったら二度と繰り返さなければいい。それだけの事だ。そこから学べばいいだけじゃねぇか』

そう言うとヌイは微笑んだ。

『学べば良い…』

スサノオはその言葉を聞き、下げていた頭を上げると、ヌイの目を見つめその言葉を繰り返した。

ヌイはスサノオの言葉に頷きながら続ける。

『そうだ、おいらもおめぇの作戦から学んだ。二度とあの娘達みてぇな犠牲を出さねぇ様、次に何かあった時にゃあ、おめぇの様に策を練るさ。何も出来ねぇ無力な存在でいるのはもう終いだ』

スサノオはヌイの目を上目遣いで覗きながら問う。

『だが、学んだとしてもそなたの傷は癒えまい?』

『あぁ…。傷は癒えねぇし、あの娘達の断末魔はきっとおいらの耳から離れねぇ』

ヌイは一瞬苦しげに眉を寄せたが、再びスサノオの目を力強く見つめ言葉を続けた。

『でも、おいらはおめぇから学んだ。おいら、知恵を絞るさ』

『…ヌイ、君は強いな』

スサノオは溜息を吐きながらヌイを賞賛した。

『そんなこたぁねぇ…』

ヌイはその言葉に苦笑いを浮かべる。

『私もそうありたいものだ』

スサノオは目を閉じて俯く。

そして己の弱さを恥じた。

(私は図体だけは誰よりも大きく育ったが、中身は姫君が言う様にいつまでも赤子のままだ…)



だが、ヌイは知っていた。

この大男が無条件に強くなる時を。

『スサノオ、おめぇは既に強い』

『強い?』

スサノオは思わず首を傾げた。

(私が強い?)

そんなスサノオの様子を見、今度はヌイがスサノオの肩を掴んだ。

そしてスサノオの目を見つめながら言う。

『いいか?スサノオ。おめぇは強い。誰よりも強い。ただおめぇは、自分がどんな時に強くなれるのか、気がついてねぇ』

『どんな時に?』

スサノオはヌイの言わんとする事がいまいち掴めぬと言った様子で繰り返した。



○・v・◎・v・●・v・○・v・◎・v・●・v・○・v・◎



それでは本日も良い一日を~。

musica 「そっか。妙に惹かれた雲南市はこの物語の舞台な訳だからだ」

スーさん 「設定としてはそうだね」

m 「でも、雲南市は行けても須我神社だけですねぇ、きっと」

ス 「奥宮は無理そうかね?」

m 「ネット情報では、須我神社から奥宮は徒歩で往復2時間半くらい掛かるそうです・・・」

ス 「どうにかして行けると良いが」

m 「行ってみたいですねぇ、ご神体の場所まで。もうちょっと調べてみます」




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by garoumusica | 2016-09-22 05:00 | 稲田姫物語 | Comments(0)
一回お休みしましたが、本日は稲田姫物語の続きです。

前回↓




『あ…』

スサノオの口から微かな声が漏れる。

ヌイにはスサノオの心の中が筒抜けだった。

水の微かな振動を通して、いや、ヌイに触れているスサノオの肉体から直接、スサノオの激しい動揺が伝わってくる。



ヌイはそんなスサノオに何処か愛おしさを覚えていた。

クシナダを見初め、その命を救う為に寝る間も惜しんで働いていたスサノオ。

その合間にも部族の者達から持ち込まれた相談事に、持てる知識を惜しみなく与えていたスサノオ。

そして昨日の夕刻、スサノオとアマテラスが繰り広げた大喧嘩。

その一部始終を、ヌイはこの川の中から見ていた。

ヌイは知っている。

本来天津神であるスサノオが、己の事を国津神だと言い切った事。

真の高天原最高神はスサノオである事。

そしてその座を蹴ってまで、クシナダと共に生きる事を選んだ事。

高天原の最高神は凄まじい程に愛情深く、そしてこんなにも繊細だ。

国津神である自分達と同じ様に、いや、自分達以上に懸命に生きている。

だが、スサノオは今のままではこの葦原中国では生きて行けまい。

そして、このままではクシナダの心を救えまい…。



『スサノオよぉ、ここは高天原ほど平和に暮らせる所じゃねぇ。部族同士の小競り合いなんて毎度の事でよぉ、その度に人は死ぬんだ。一日でひとつの部族が丸ごと殺される事も珍しくねぇ。何の罪も無い子供達にだって容赦ねぇ』

ヌイのその言葉に、スサノオはオロチの餌食となったクシナダの姉達の姿を思い出した。

『おめぇだってこの姫さんを守る為に、人を殺す事もあるかもしれねぇ。姫さんを守る為だったら、おめぇはきっと相手を殺す。なんの躊躇も無くオロチを殺っちまった様にな』

『…』

スサノオはオロチを殺すことに対して何のためらいも無かった自分を思い出した。

そして恐らくその相手が人だったとしても、自分は…。

『別においら、人を殺す事が正しいって言いてぇ訳じゃねぇよ。ただ、おめえの甘っちょろい考えじゃあ、ここじゃ生きていけねぇ。姫さんを、アシナヅチの部族の者達を守っていけねぇって言いてえんだ』

スサノオはただヌイの話を聞いていた。

『おめぇは穢れた自分が清らかな姫さんを穢してしまう事を、妙に恐れているみてぇだけどよぉ。おめぇ、姫さんが何であそこ迄清らかでいられたか考えた事あるか?』

それは昨日クシナダに髪を梳いてもらっている時に、既に気が付いていた事だ。

『最後の姫故に、穢れた世から隔離されて生きて来たからだろう?』

『そうだ。だけどもよぉ、オロチを退治して姫さんは生き残っちまった。アシナヅチの娘達唯一の生き残りだ。その事が姫さんの心にどれだけの傷を負わせるか、おめぇ分かってんのか?』

『それは姫の責任ではない』

スサノオは断固とした口調で否定をする。

『そりゃそうさ。でも生き残った姫さんはきっと自分の事を責めるはずだぜ?おめぇと幸せになればなる程、何故自分だけ生き残ったのか、そして自分だけこんなにも幸せで良いのだろうかって』

『そんなもの良いに決まっている…!』

『姫さんだけじゃねぇよ、アシナヅチだってそうさ。酒飲まして酔い潰れたところを切る、そんな簡単な事を思いつけずに、ただただ娘達を薬漬けにした上に7人も娘を失っちまったんだ。自分達の愚かさを呪うだろうよぉ』

『そんな事』

「そんな事はない」とスサノオは言おうとしたが、その言葉はヌイによって遮られた。

『おいらだってそうさ!7人もの娘達が喰われるのを、ただただ川の中から見てるしか出来なかったんだ!…おいら、自分が腹立たしいよ。何でおいらには思いつけなかったんだろうって…』

スサノオは苛立ちを抑えきれず、ヌイの肩を掴み乱暴に己の方に向かせると、ヌイの肩を揺らしながら心の声を荒げた。

『では私はどうすれば良かったのだ!?姫君を見捨てれば良かったのか!?姫君はオロチに喰われた方が良かったのか!それは違うだろう!?』

その剣幕にヌイも思わず声を荒げる。

『おいらはそんな事が言いたいんじゃねぇ!どうしようもねぇ心の話をしてんだ!』

『…どうしようもない?』

スサノオはその凛々しい眉をひそめ、呟く。

『あぁ!おめぇにもよく分かんだろ?どうしようもねぇと分かっていながら、おめぇ自身昔やっちまった事をグジグジ悔やんで、姫さんに触れるのを躊躇ってるじゃねぇか!」

ヌイはスサノオの手の中にある妻櫛を指差して言う。

『悔やんだってやっちまったもんは取り消せねぇんだ!隠そうとしたっておめぇ自身が忘れねぇ!そうだろ!?スサノオ!』



(*゚Д゚)ノ。,゚゚+.。,゚゚+.。,゚゚+.。,゚゚+.。,゚゚+.。,゚゚+.。,


それでは本日も良い一日を~。

musica 「5時間もかけたのにヌイ君編が終わらなかった・・・」

スーさん 「ここは大事な所だからね」

m 「それは分かる気がします。スサノオ君だけでなくて色んな事にも応用出来そうなところだから・・・。何だかアレみたいです。『今…あなたの…心に…直接…呼びかけています…』」

ス 「・・・いや、それはどうであろうか・・・。だがまぁ否定はしない。我々の声に気が付くか気が付かぬかはその者次第だからね」



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by garoumusica | 2016-09-09 05:00 | 稲田姫物語 | Comments(0)
はい!本日も稲田姫物語の続きです。

昨日↓。




『く、苦しい…。苦しいよスサノオ…』

ヌイはスサノオの腕の中で瀕死の声を上げる。

もちろん演技だ。

スサノオはヌイの言葉を聞き力を加えるのをやめたが、羽交い締めはそのまま続けた。

『どうだ?白状する気にはなったか?』

『言うよ!言うから放せよ!』

ヌイはスサノオの腕を下から支える様に掴みながら、尾びれを上下左右に動かし暴れた。

『言ったら離してやろう』

『ちぇっ、信用ねぇなぁ…』

ヌイはスサノオの腕の中で力を抜いて大人しくすると、唇を尖らせながら拗ねたように言った。

『…おめぇの姉ちゃんだよ!高天原の日神だ!』

『姉上か…』

(やはりそうか。十中八九、そうだろうとは思っていたが…)

スサノオは溜息交じりに続けた。

『それで?姉上に何と言われたのだ?』

『最後の姫を救えるのは高天原のスサノオしかいない。だからスサノオがアシナヅチの部族に気がつくよう、時機を推し計って箸を流せってさ!』

『!』

スサノオの身体に衝撃が走る。

『ではあの時、川の上流から流れてきた箸は、お前が、延いては姉上が流した物だったのか!』

『スサノオさぁ、今頃気がついた訳?ほんっとおめでたい頭してんなぁ』

ヌイは呆れた調子で言った。

『どういう事だ?』

スサノオは首を傾げながら問う。

『だってよぉ、スサノオが川辺に近づいたあんな上手い時機で箸が流れて来るなんて事が、自然に起こるとでも本気で思ってんの?』



スサノオはこの地へ辿り着いた時の事を思い出していた。

あの時はスサノオに食べ物を恵んでくれる人も、そもそも民家も見当たらず、兎にも角にも腹を空かしていた。

故に水でも飲んで飢えをしのごうと川に近づいたところ、折良く上流から箸が流れて来、それによってアシナヅチの部族の存在を知る事が出来た。

更には、クシナダという最愛の乙女にも出逢う事が出来たのだ。

全てのスサノオの幸運は、あの箸が折良く上流より流れ来たおかげだった。

『そ…、そう言われてみればそうかもしれぬが…。姉上がオロチの件に絡んでいたのは知っていたが、流石にあの箸までとは…』

スサノオは言葉に窮しながら、しどろもどろに答える。

(いや、待てよ…?)

スサノオはふと、ある疑問点に気がついた。

(なに故姉上はヌイに箸を流す様頼んだのだ?箸を流すくらいなら、姉上にとっては朝飯前だろう…)

スサノオは腑に落ちない点を抱きながらも、ヌイを解放しようと腕の力を緩めた。

…が、ヌイはスサノオの腕から逃れようとしない。

それどころか、逆にスサノオの逞しい腕に両腕を絡ませて来た。



『ヌイ?どうかしたのか?』

ヌイは俯いた姿勢で黙ったままだった。

スサノオはハッと気がつき、慌てて問う。

『おい!何処か怪我でもしたのか!?』

(ふざけが過ぎたか…)

スサノオは後悔の念を抱く。

『ちげぇよ、ばっか…』

ヌイはスサノオの腕にしがみついたまま尾びれを上下に揺らし、ポツリポツリと話し出した。

『おいらさぁ、おめぇのおっかねぇ姉ちゃんが怖くて計画に乗った訳じゃねぇよ』

『ん?』

スサノオはヌイが何を言いたいのか分からないと言った様子だ。

『おいら、おめぇという人物をきちんと見て、おめぇなら最後の姫を幸せに出来ると思って、おめぇの姉ちゃんに手を貸したんだ』

『ヌイ…』

スサノオはヌイの言葉に温かいものを感じ、そっとヌイの頭のてっぺんに顎を乗せた。

『そしておめぇは立派にやってのけた。そうだろう?』

『まぁ、そうだ…』

スサノオはどこか歯切れが悪い。

ヌイは尾びれを上下させるのを止めると、ちらりとスサノオを振り返った。

『ん?どうしたのだ?』

スサノオは優しく問う。

ヌイは慌てて前を向き、スサノオの逞しい腕にしがみつくと、少々躊躇った後で再び話し始めた。

『だからさ、スサノオ…。昔の事でグジグジ悩むのはもう止めにしなよ』

『えっ?』

スサノオは思わずヌイの頭から顎を離した。

ヌイはスサノオの腕をぎゅっと握り締め、言葉を続けた。

『…悪りぃな、スサノオ…。おいらはこの川の主だから、おめぇがこの川の近くで思った事なんて全て筒抜けなんだ。だから、おめぇが高天原で何を仕出かして、何で高天原を追放されたのか、今おめぇが何を悔やんでいるのか、そして何を恐れているのかなんてこたぁ、おいら…、初めっから全部分かってたんだ』



スサノオは思わず身体を硬直させた。

氷で出来た杭を打ち込まれたかの様な冷たく鋭い痛みが胸に走る。

己の犯して来た悪行をこの地の者に知られなければ良い。

皆に知られなければ、新しい地で新しい自分として生まれ変わって生きて行く事が出来る。

だから、誰にも言わなければ良い、知られなければ良い。

スサノオは心のどこかで、そう思っていた。



(*゚Д゚)ノ。,゚゚+.。,゚゚+.。,゚゚+.。,゚゚+.。,゚゚+.。,゚゚+.ヽ(゚Д゚*)



それでは本日も良い一日を~。


musica 「あーも~~~!稲田姫物語を書いているとワイヤーとかお絵描きとか、そっち方面のやる気が起きない~~~」

スーさん 「脳の方向性が違うからそれは仕方のない事だ」

m 「ガッデム!」

ス 「神は関係ないだろう…」



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by garoumusica | 2016-09-07 05:04 | 稲田姫物語 | Comments(0)
本日も稲田姫物語の続きです。

昨日↓。




次の瞬間、川下の方から聞き覚えのある威勢の良い声が、スサノオの頭の中に直接響いて来た。

『臭い臭い!血生臭いぞ!誰だ?おいらの庭に血を撒き散らしたのは!』

突然現れた声の主に、スサノオは驚きもせずに挨拶をする。

『やぁ、お邪魔してるよ』

声の主、それはこの川に住むと言う水の精だ。

自称この川の主だという。

名をヌイと言い、上半身は人間の少年の様だが下半身は魚であった。

ヌイとは昨日この川で身を清めた時に初めて会った。

『なんだなんだ、くっさい野朗が現れたと思ったら高天原のスサノオか』

『すまぬな、しばらく我慢してもらえるかね?』

『チッ、仕方ねぇなぁ…』

ヌイは周りを気にするかの様にスサノオに耳打ちをする。

『おい、ところで昨日のアレ…、どうだったよ』

『君が教えてくれたあの薄紅の石、姫君に大層喜んでもらえたよ』

スサノオは頷きながら満足そうに答えた。

昨日スサノオがクシナダに贈った薄紅の石は、どうやらヌイに協力してもらい見つけたようだ。

『そうだろう?おいら、この姫さんには似合うと思ったんだ』

ヌイは得意そうな表情を浮かべながら、スサノオの掌の妻櫛を覗き込んだ。

スサノオはその言葉を聞き、ピクリと眉を動かす。

そして、

『…おい、なんで姫君に似合うと知ってた?』

と、凄みながらヌイに問うた。

『妬くなよ、ばっかだなぁ。おいらはこの川の主だぜ?この辺りの事でおいらが知らない事などあるかよぉ』

ヌイはスサノオの顔を覗き込みながら呆れた様に言った。

「ばっ、妬くなど、そんな…」

スサノオは水の中で思わず声に出しまい、そのはずみで川の水を大量に飲み込んだ。

そして堪らず川面に顔を出しすと、盛大に咳き込み始めた。

ヌイはその様子を見ながら呆れた調子で言う。

『ばっかじゃねぇの?おめぇ…』

「放っておけ…」

咳交じりにスサノオは答えた。



咳の落ち着いたスサノオは再び川の中へと潜る。

こうした方がヌイにとって会話がしやすいからだ。

水の中に戻ったスサノオに、ヌイは嬉々として話し掛ける。

『そんな事よりもさ、上手くやったじゃねぇか』

『見てたのか』

『見てたよ!この川の主だからさぁ!…まぁ、オロチが酔い潰れるまではヒヤヒヤしてたけど』

『危険だから離れている様に伝えたじゃないか…』

スサノオは呆れながら言う。

『ばっか、おいらはこの川の主として見届ける必要があったんだよ!』

そしてヌイは視線を落とし、声を震わせながら続けた。

『…おいらさぁ、ずっとアシナヅチの娘達が喰われるのを見てきたんだ…』

『…』

『おいら、こんな形(なり)だろう?助けてやりたくても出来なかったんだ…。ずっと…、ずっとあの娘達が喰われるのを見てるしかなかったんだよぉ…』

『辛かったのだな…』

ヌイは2度3度頷くと、嗚咽を堪えながら続けた。

『あの娘達よぉ、見た目はあっちの世界に行ってる様に見えたけどよぉ、実は心の中はマトモだったんだ』

スサノオは先程見たクシナダの姉達の姿を思い出し、ハッとした。

『だからオロチに喰われる時なんかよぉ、顔は微笑んでいるのに心の中では物凄い悲鳴をあげてた。…おいら位の神格になるとその声が聴こえちまうもんだからよぉ…』

『ヌイ…』

スサノオがヌイの肩に手を置こうとした瞬間にヌイは顔を上げ、先程までとは打って変わり、輝くような笑顔を浮かべながら声を弾ませて続けた。

『だからあの日、あのおっかねぇ姉ちゃんに声を掛けられた時は、それはもう尾びれを付けたまんまで陸地を駆け巡れるんじゃねぇか、っていうくらい嬉しかったんだ!姉ちゃんに協力したら、最後の姫は助かるかもしれないって!』

スサノオはピクリと眉を上げた。

『おっかない姉ちゃん?』



ヌイは思わず『しまった』という表情を浮かべると、上目づかいでスサノオをちらりと盗み見た。

『ヌイよ、それは一体誰の事だ?』

ヌイは視線をわざとらしく外した。

そのまま数秒その姿勢を保った後、

『じゃあな!おいら忙しいから!』

と言ってヌイは回れ右をして去ろうとしたが、目にも止まらぬ速さでスサノオに羽交い締めにされてしまい、スサノオの腕の中でむなしくその身をばたつかせた。

『おい、おっかない姉ちゃんとは誰の事だ?誰に何と声を掛けられたのだ?ん?』

ヌイは尾びれをジタバタと動かして腕から逃れようとするも、スサノオはがっちりと締めて離そうとしない。

『もう一度聞くぞ?ヌイ。誰に何と声を掛けられ、それでお前は一体何をしたのだ?』

スサノオはヌイを羽交い絞めにしている腕の力を、加減しながら少しずつ強めていった。


★*。。。*☆´・ω・`★*。。。*☆´・ω・`★*。。。*☆´・ω・`★*。。。*☆


それでは本日も良い一日を~。

musica 「そういえばさ、昨日のお話でスサノオ君が妻櫛と波長を合わせたのって、俗にいうチャネリングってやつでしょ?」

スーさん 「それを言うならリーディングだろう?」

m 「・・・」

ス 「心を鎮めてその対象に意識を集中する。それからその対象の固有の鼓動と己の鼓動を合わせる。君が藤原京で行った事と似た様なものだ」

m 「なるほど」

ス 「まぁ、あまりお勧めはしないがね」

m 「なんでですか?」

ス 「これは対象物と一体化する方法だ。その対象物に負の気が有ってごらん?一体化している君に多大な影響を与えよう」

m 「病院へ行って貰っちゃったのと似た様な感じか・・・」

ス 「そういう事だ」



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by garoumusica | 2016-09-06 05:00 | 稲田姫物語 | Comments(0)
本日も稲田姫物語の続きです。

前回↓。




スサノオは川のほとりへ到着すると、身を屈め、愛用の剣に付着したオロチの血と肉片を川の水で流し始めた。

指で優しく撫でて刃の状態を確認すると、大分刃が欠けてしまっている。

(あぁ、これは急いで研ぎ直さなければならぬな…)

そしてスサノオの口から溜息が漏れた。

(疲れた…)

肉体の疲労はそう感じてはいないが、精神的な疲労が大きい様だ。

流石のスサノオであっても、あの犠牲者達の塊から受けた衝撃は計り知れない。

「やはり、遺体は燃やして正解だったのだ。

私でさえこれ程までに衝撃を受けたのだ、か弱きクシナダ姫には耐えられなかったであろう…」

スサノオは自分自身を納得させるかの様に、溜息混じりに声に出して独りごちた。

そして息を吸い込むと、ふと、己から発せられる血の臭いに気がついた。

「なんだ…?」

立ち上がりながら己の身体を見ると、オロチの返り血でも浴びたのだろう、衣の至る所が赤く染まっている。

スサノオはハッと気がついた様な表情を浮かべた後に、美豆良からクシナダである妻櫛を外した。

そして裏表を隈無く確認すると、ホッと胸を撫で下ろした。

どうやらクシナダに掛けたおいた妖術のお陰で、血や肉片は妻櫛を避けた様だ。



スサノオは優しく微笑みながら掌の妻櫛をしばらく見つめ、それからそっと目を閉じる。

意識を妻櫛に集中させると、掌(たなごころ)にクシナダの鼓動が響いて来る様だ。

しばらくその鼓動を堪能していると、その鼓動は次第にスサノオの身体全体に響き始め、やがてスサノオの鼓動はクシナダの鼓動と一致した。

それから何かキラキラと輝くものがクシナダからスサノオへと流れ込み、そしてスサノオの身体中を満たしていった。

その感覚はまるでクシナダに抱きしめられているかの様だ。

(姫君に逢いたい)

そう思ったスサノオはクシナダに掛けた術を解こうとしたが、己の血に塗(まみ)れた形(なり)を思い出し、再び溜息をついた。

(この様な形で姫君に逢う訳にはいかぬな…)

スサノオは空いた手で頭をボリボリと掻くと、その指にオロチのものと思われる肉片が付着した。

その肉片を見、スサノオは再び大袈裟な溜息をついた。



スサノオは川辺の岩の上に剣を適当に、それから妻櫛を恭しく置くと、腰に携えていた短剣で美豆良を纏めた紐を切った。

スサノオの背に、癖のある髪が広がる。

もう片方の美豆良を解くと短剣を腰に仕舞い、妻櫛を恭しく手に取ると再び水面へと向かった。

そしてスサノオは念の為に妻櫛に再び術を掛け、衣を身に付けたまま川の中央へと進み、そして水の中へとその身を沈めた。

(川よ、清き水の流れよ。

この身の骨の髄まで染み付いた穢れを、その清き流れによって払え給え)

そしてスサノオは祈った。

何に対して祈っているのか自分でも分からないが、必死になって祈った。

この掌のクシナダに、相応しい己となれる様に。

いつの日か、己の犯した罪が許される様に…。



ふと、スサノオは水の中で目を開けた。

誰かに優しく頭を撫でられた様な気がしたからだ。

目の前は優しい月の光で満ちていた。

(兄上…?)

今宵は満月だ。

スサノオの問いには答えぬ月の光が、川の底のスサノオとクシナダに優しく降り注ぐ。

まるで、若い二人の新しい門出を祝うかの様に…。



☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆



それでは本日も良い一日を~。


スーさん 「己に自信をつけたい時は、その内容を実際に口に出してみると良い」

musica 「スサノオ君がひとり言を呟いたみたいにですか?言霊?」

ス 「その通り」



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by garoumusica | 2016-09-05 05:00 | 稲田姫物語 | Comments(0)
物語の続きを載せるという事は、絵が進んでいない証拠(`・ω・´)+




スサノオは改めて犠牲者達の塊を見つめた。

誰の目にも触れさせぬとした以上、せめて己だけでも彼らの姿を憶えておこうと決めたからだ。

それがスサノオに出来る、せめてもの弔いだった。

スサノオはゆっくりと時を掛け、ひとつひとつ顔を見て歩いていた。

その塊の中には、クシナダと同じ様な年の頃のおなご達がいた。

皆、同じ様に苦し気な表情を浮かべていたが、その中には不思議と恍惚とした表情を浮かべた者達がいた。

どこかクシナダに似た面影をしている様に見える…。

そしてスサノオはアシナヅチとの会話を思い出した。

正気を保てなくなったクシナダの姉達を楽にしてやる為に、薬湯を用いて恍惚の世界へと旅立たせた、と言っていた事を…。

(では、この者達がクシナダ姫の姉君か…)

スサノオは眉間に深い皺を寄せ、クシナダの姉達を見つめた。

この塊には不釣り合いな程に、幸せに満ちた表情を浮かべたおなご達を。



スサノオはアシナヅチと共に出掛けた際に聞かされた話を思い出していた。

一番上の娘がオロチの犠牲となった翌年、再び娘を喰らいに来るとオロチが予告した時期が近づくにつれ、恐怖のあまり二番目の娘の気が触れていったと。

アシナヅチは愛娘の苦しみを解放してあげようと、薬師に頼み込み、恍惚の世界へと旅立つという薬湯を飲ませたのだという。

それ以来その薬湯を気の触れてしまった娘達に飲ませていたが、クシナダだけは何故か正気を保ち続け、その薬湯を用意する事は無かった。

それ故、この娘は芯が強いのだと思っていたが、それは間違いであった。

私達夫婦に負担を掛けまいと正気を保ち、独りで恐怖に立ち向かっていただけであった。

貴方様と接し、生まれて初めて心からの笑みを浮かべるクシナダを見、そしてようやく気がつく事が出来た。

最後の姫は強いだけではなく、己の死よりも私達の事を心配する心優しい娘だという事を。

そして娘達に薬湯を飲ませたのは娘の為ではなく、ただただ自分達が正気を失った娘を見たくなかっただけであった。

心が弱く身勝手なのは自分達の方だった。

その事に、貴方様と接し笑うクシナダを見て、ようやく気が付いたのだ。

そう言って、アシナヅチは涙を流した。



スサノオは恍惚の表情を浮かべるクシナダの姉達を見、力になれずに申し訳なく思うと同時に、クシナダがこの様な姿とならずに済んで良かったと安堵している自分に気がつく。

(苦しい…)

己の身勝手さに耐えられなくなったスサノオは、

「力になれず申し訳ない」

とだけ呟くと、己の弱さから逃げるかの様に、急いで犠牲者達の塊に火をつけた。

すると、炎に包まれる塊を形成する一人一人から、悲鳴とも怒声とも取れる様な叫び声が上がった。

「…!」

熱く激しい旋風が起こり、スサノオは思わず腕で顔を隠し後退りした。

炎は激しく燃え上がり、まるでオロチの首であるかの如く四方八方へと激しく伸びている。

空には暗雲が立ち込め、満月の輝きを覆い隠し、そして雷鳴が轟き始めた。

更にはそれらに呼応するかの様に大地が揺れ始め、スサノオは立っている事すら難しくなり、その場に片膝を着け、なんとか身を保つ。

炎に包まれた犠牲者達の塊から聞こえる悲鳴、天に響く雷鳴、地の底から轟く地鳴りは、やがてひとつの大きな唸りとなった。

そして次の瞬間、耳を劈く轟音を上げるや否や炎は閃光と化し、雷光が落ちると同時に天へと向かって駆け上がっていった。



そしてスサノオに、何事も無かったかの様な静寂が訪れた。

空を見上げると満月が煌々と輝き、その輝きに星々は姿を潜めている。

地を見ると彼らの残された肉体は穏やかな炎に包まれ、もはやその表情を窺い知る事は出来ない。

聞こえるのは残された死骸が燃える音だけだった。

スサノオは傍の剣を手に取ると、剣でその身を支えながら立ち上がった。

そしてしばらくの間燃え盛る炎を見つめていたが、次の瞬間、くるりとその身を翻し、川辺へと向かって歩き出した。



*+†+*――*+†+*――*+†+*――*+†+*――*+†+*――*+†+*



それでは本日も良い一日を~。

musica 「稲ちゃんが現れないという異常事態!」

スーさん 「今はスサノオの成長記だね」



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by garoumusica | 2016-09-04 05:00 | 稲田姫物語 | Comments(0)

目に見えない厳ついおっさんと絵描きの会話。それから大変申し訳ありませんが、本サイト内の画像、写真の無断転載・転用を禁止させていただいております。


by musica