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稲田姫物語 妖しき剣編 その7。

一回お休みしましたが、本日は稲田姫物語の続きです。

前回↓




『あ…』

スサノオの口から微かな声が漏れる。

ヌイにはスサノオの心の中が筒抜けだった。

水の微かな振動を通して、いや、ヌイに触れているスサノオの肉体から直接、スサノオの激しい動揺が伝わってくる。



ヌイはそんなスサノオに何処か愛おしさを覚えていた。

クシナダを見初め、その命を救う為に寝る間も惜しんで働いていたスサノオ。

その合間にも部族の者達から持ち込まれた相談事に、持てる知識を惜しみなく与えていたスサノオ。

そして昨日の夕刻、スサノオとアマテラスが繰り広げた大喧嘩。

その一部始終を、ヌイはこの川の中から見ていた。

ヌイは知っている。

本来天津神であるスサノオが、己の事を国津神だと言い切った事。

真の高天原最高神はスサノオである事。

そしてその座を蹴ってまで、クシナダと共に生きる事を選んだ事。

高天原の最高神は凄まじい程に愛情深く、そしてこんなにも繊細だ。

国津神である自分達と同じ様に、いや、自分達以上に懸命に生きている。

だが、スサノオは今のままではこの葦原中国では生きて行けまい。

そして、このままではクシナダの心を救えまい…。



『スサノオよぉ、ここは高天原ほど平和に暮らせる所じゃねぇ。部族同士の小競り合いなんて毎度の事でよぉ、その度に人は死ぬんだ。一日でひとつの部族が丸ごと殺される事も珍しくねぇ。何の罪も無い子供達にだって容赦ねぇ』

ヌイのその言葉に、スサノオはオロチの餌食となったクシナダの姉達の姿を思い出した。

『おめぇだってこの姫さんを守る為に、人を殺す事もあるかもしれねぇ。姫さんを守る為だったら、おめぇはきっと相手を殺す。なんの躊躇も無くオロチを殺っちまった様にな』

『…』

スサノオはオロチを殺すことに対して何のためらいも無かった自分を思い出した。

そして恐らくその相手が人だったとしても、自分は…。

『別においら、人を殺す事が正しいって言いてぇ訳じゃねぇよ。ただ、おめえの甘っちょろい考えじゃあ、ここじゃ生きていけねぇ。姫さんを、アシナヅチの部族の者達を守っていけねぇって言いてえんだ』

スサノオはただヌイの話を聞いていた。

『おめぇは穢れた自分が清らかな姫さんを穢してしまう事を、妙に恐れているみてぇだけどよぉ。おめぇ、姫さんが何であそこ迄清らかでいられたか考えた事あるか?』

それは昨日クシナダに髪を梳いてもらっている時に、既に気が付いていた事だ。

『最後の姫故に、穢れた世から隔離されて生きて来たからだろう?』

『そうだ。だけどもよぉ、オロチを退治して姫さんは生き残っちまった。アシナヅチの娘達唯一の生き残りだ。その事が姫さんの心にどれだけの傷を負わせるか、おめぇ分かってんのか?』

『それは姫の責任ではない』

スサノオは断固とした口調で否定をする。

『そりゃそうさ。でも生き残った姫さんはきっと自分の事を責めるはずだぜ?おめぇと幸せになればなる程、何故自分だけ生き残ったのか、そして自分だけこんなにも幸せで良いのだろうかって』

『そんなもの良いに決まっている…!』

『姫さんだけじゃねぇよ、アシナヅチだってそうさ。酒飲まして酔い潰れたところを切る、そんな簡単な事を思いつけずに、ただただ娘達を薬漬けにした上に7人も娘を失っちまったんだ。自分達の愚かさを呪うだろうよぉ』

『そんな事』

「そんな事はない」とスサノオは言おうとしたが、その言葉はヌイによって遮られた。

『おいらだってそうさ!7人もの娘達が喰われるのを、ただただ川の中から見てるしか出来なかったんだ!…おいら、自分が腹立たしいよ。何でおいらには思いつけなかったんだろうって…』

スサノオは苛立ちを抑えきれず、ヌイの肩を掴み乱暴に己の方に向かせると、ヌイの肩を揺らしながら心の声を荒げた。

『では私はどうすれば良かったのだ!?姫君を見捨てれば良かったのか!?姫君はオロチに喰われた方が良かったのか!それは違うだろう!?』

その剣幕にヌイも思わず声を荒げる。

『おいらはそんな事が言いたいんじゃねぇ!どうしようもねぇ心の話をしてんだ!』

『…どうしようもない?』

スサノオはその凛々しい眉をひそめ、呟く。

『あぁ!おめぇにもよく分かんだろ?どうしようもねぇと分かっていながら、おめぇ自身昔やっちまった事をグジグジ悔やんで、姫さんに触れるのを躊躇ってるじゃねぇか!」

ヌイはスサノオの手の中にある妻櫛を指差して言う。

『悔やんだってやっちまったもんは取り消せねぇんだ!隠そうとしたっておめぇ自身が忘れねぇ!そうだろ!?スサノオ!』



(*゚Д゚)ノ。,゚゚+.。,゚゚+.。,゚゚+.。,゚゚+.。,゚゚+.。,゚゚+.。,


それでは本日も良い一日を~。

musica 「5時間もかけたのにヌイ君編が終わらなかった・・・」

スーさん 「ここは大事な所だからね」

m 「それは分かる気がします。スサノオ君だけでなくて色んな事にも応用出来そうなところだから・・・。何だかアレみたいです。『今…あなたの…心に…直接…呼びかけています…』」

ス 「・・・いや、それはどうであろうか・・・。だがまぁ否定はしない。我々の声に気が付くか気が付かぬかはその者次第だからね」



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by garoumusica | 2016-09-09 05:00 | 稲田姫物語 | Comments(0)

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