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稲田姫物語 妖しき剣編 その11。

『稲田姫物語 妖しき剣編』の続きです。

稲田姫物語 妖しき剣編 その1。



スサノオは後ろ手でヌイに手を振ると、そのまま振り返りもせずに岸辺を目指した。

その間、頭に浮かぶのは掌の中のクシナダの事だけだった。

(11…、まだ11だったのか…)

クシナダはその齢らしい幼さを微塵も感じさせなかった。

スサノオは初めてクシナダを見た時の事を思い出す。

ただひたすらまっすぐに、己の目を見つめ返して来たクシナダ。

凛とした佇まいでそこに在りながらも、それと同時に己が護らなければならぬと強く思わせる、その存在の儚さ。

それは全て、その境遇ゆえ。

今もこの目にありありと映るその姿が、余りにも美しく、そして悲しかった。

(私が強くあらねば、姫君は安心して弱さを出せまい。その齢らしい弱さを)

昨日赤子扱いをされた時に見せたクシナダの、その歳に不釣り合いな母の様な包容力を思い出す。

(今の弱い己のままでは…)



スサノオは川面が腰の辺りになった所で足を止めると、妻櫛を握る掌を胸の鼓動の上に置き、目を閉じた。

そして改めて誓う。

(姫君が安心して己を出せる様、私は強くなろう)

そのまましばし目を閉じていたスサノオだが、次の瞬間、全身の毛が逆立つ様な感覚を覚え、咄嗟に目元まで身を沈めた。

そして妻櫛を袂に入れると同時に腰に携えていた短剣を抜く。

先程まで穏やかに拍を刻んでいた胸が、今や早鐘を打っている。

水の中に居ながらも冷や汗が溢れ出るのが分かる程だ。

(何だ?この感覚は…)

スサノオは素早く辺りを見渡し、その原因を探る。

そして今だ煌々と燃え上がる二つの炎に目をやると、その明かりに照らされた大勢の人影を見つけた。

ここから確認出来るだけで、アシナヅチの部族の者達が皆戻って来たのではないかと錯覚する程の数だ。

(やはり炎に引き寄せられたか…)

スサノオはチッと小さく舌打ちをし、苦々しく呟いた。

「まるで虫だな」

それからちらりと月を見、その位置を確認する。

(夕餉の刻まで残っていた者達が此処まで戻って来るまで、今しばらく掛かるな…)

アシナヅチの部族の者達総てが居住地を長時間留守にする事は余りにも危険だと判断し、部族は幾つかに分けて退避させていた。

女子供と老人、そしてそれらを守る者達は最も遠く離れた安全な場所へ。

ある程度力のある者達は、月が山の頂に隠れる迄に居住地に戻れる場所へ。

そして見張りを兼ねた戦闘力の高い者達は、オロチ退治当日も刻限ギリギリまでスサノオと行動を共にし、辿り着ける場所まで退避。

そして狼煙を確認次第引き返すという手筈であったが、それでも山を幾つか超えている筈だから、残念ながら今しばらく援護は期待出来そうにない。




次回は年が明けてからです。

本日の本館ブログで、スーさんの後ろ姿の映ったピーターサイトの特集をしました。

良かったらご覧ください!


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それでは良いお年を~。










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by garoumusica | 2017-12-30 05:00 | 稲田姫物語 | Comments(0)

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