稲田姫物語 妖しき剣編 その12。

稲田姫物語の続きです。




ヌイと水中で話している間に幾らか川下に流されていた様で、幸いにも炎の周りに集まっている連中はまだスサノオの存在は気づいていない。

スサノオは己の剣を置いている岩の周辺を確認する。

誰もいない。

幸い皆炎に注目し、岩の上のスサノオの剣にも気がついていないようだ。

(まずは剣まで辿り着く事だな…)

スサノオは目だけを水面から出し、そのまま音を立てぬよう細心の注意を払いながら水中を移動し始めた。

川面が浅くなるにつれ半ば這うようにして移動し、砂地へ辿り着くや否や足音を消して走り出した。

そして岩影目掛けて飛び込むと、音を立てぬよう回転しながら着地し、それと同時に素速く手を伸ばし愛用の剣を掴み取るとサッと岩影にその身を潜め、いつでも走り出せる様にと立てた片膝の上に剣を置いた。

これだけの動きをしてもスサノオは息ひとつ乱していない。

オロチ退治をした後でもまだまだ戦えそうだ。



スサノオは袂から妻櫛を取り出すと、無意識のうちにその唇を妻櫛に寄せる。

そして顔にかかる濡れた髪を乱暴に耳へと掛けると、妻櫛をそっと挿した。

(さて、これからどうしたものか…)

スサノオは腿に乗せていた剣を手に取り鞘を抜くと、刃を月の光の下で確認をした。

オロチを切り刻んだ剣の刃には欠けが多く出来ていたが、切っ先は辛うじて残っている。

だがこの刃では突くか叩く程度の攻撃しか出来まい。

それでもスサノオの力を持ってすればかなりの打撃を与える事は出来るだろうが、恐らく全ての者を攻撃するより先に剣が折れてしまうだろう。

愛用の剣を過信し、短剣しか用意しなかった己が腹立たしい。

短剣だけではなんとも心許無い…。

だが、今更後悔しても無駄だ。

(知恵を絞らねば…)

スサノオは正確な人数を把握する為に、こっそりと岩影から頭を出して様子を伺った。

70…、80…。

炎の加減で把握しにくいが、100は下らないかもしれない。

しかも武装している者に加え女子供も居る。

(部族総出か?)

スサノオは再び岩影に頭を隠した。

(多勢に無勢だ、効率良く攻撃を仕掛けねば…)

ポタポタと髪から滴り落ちてくる水滴を顎の下で拭う。

(考えろ、考えろ、考えろ…)

呪文の様に繰り返しながら、スサノオは髪から滴り落ちてくる水滴を再び顎の下で拭った。

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スサノオは炎の周りの者達の姿を思い描く。

あの者達の出で立ち、風貌、髪型…。

そして首を捻る。

(おかしい…)

どこか統一感を感じられない上に、アシナヅチに聞いたこの辺りに住む部族の特徴に当て嵌まらない者達がほとんどだ。

(彼奴らは何処からやって来たのだ?)

そしてスサノオの頭に真っ当な疑問が生まれた。

(川の中に居たとはいえ、これ程の人数の移動に気がつかないものか?)

それ程長い間、水中に潜っていた訳ではない。

だが気配を全く感じなかった…。

おまけにヌイも慌てている様子はなかった。

(何か引っ掛かる)

スサノオは考えながら無意識に妻櫛を指で優しく撫でる。

(何だ?この違和感は…)

眉間に皺を寄せながら考えていたスサノオだが、ふと己の指が無意識に妻櫛を撫でていた事に気がつくと、苦笑いを浮かべながら妻櫛を手に取った。

(意識せずに姫君を撫でていたとは…、かなりの重症だな)

スサノオは笑みを浮かべながらしばし妻櫛を見つめていたが、突然その笑みを消し、何かに気がついたかのような表情を浮かべた。

そして再び岩影から炎の周りに集まっている者達を見た。

男達の年齢はバラバラだが、ほぼ皆武装している。

女達はまだ乙女とも童女とも呼べる年齢の者達。

その童女達が今から侵略をしようかという集団の中に混じっているのは、明らかに不自然だ。

そして何より違和感を覚えずにはいられないのは、その風貌や服装が余りにも異なる点だ。

(まさか…)

スサノオは再び岩陰に身を隠し、その手の中の妻櫛をじっと見つめた。

そして目の前に広がる暗闇に視線を移すと小さく呟いた。

彼らの共通点を挙げるとするならば、それは恐らく、

「オロチの犠牲となった者達…」



(・v・)ノ(゚∀゚)ノ (゚д゚)ノ(´x`)ノ(゚_っ゚)ノ(・v・)ノ



それでは本日も良い一日を~。


時間が出来たので挿絵を描いてみました。

服を葦原中国風にするか高天原風にするか迷いましたが、追放された時の服をいまだに来ているという設定にしました。

あと爪の形がおかしいのは、剥がされた爪がようやくあそこまで伸びたよ!というイメージで描いたからです。

画廊musicaの微妙なこだわりでした。



次回の稲田姫物語は、まだ何も書いていないのでいつ載せるかは未定でっす(`・ω・´)+








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Commented by 健オタ at 2018-01-09 12:01 x
こんにちは〜✨
お元気ですか❓

物語 御伽の国の物語のように とても引き込まれてしまいます〜
文章の構成がとってもお上手ですよね✨✨
素敵です😊

スサノオさま 若いですね〜(笑)
挿絵があるとグンとイメージが付きやすいんですね
ご苦労があるとは思いますが 引き締まります🌸

物語の続きは
ゆっくりと自分のペースで進まれて下さい〜

楽しみにしています✨(≧∀≦)
Commented by garoumusica at 2018-01-09 18:07
> 健オタさん、こんばんは~、元気ですよ!
コメントありがとうございます。

映像を文章化するのはとても難しく、褒めていただけるとは思ってもいなかったので嬉しいですヽ(●´∀`●)ノ

スサノオ君、御年24、まだまだフレッシュマンです。

映像を絵にするのは楽なので、文章化よりも絵に描いた方が楽しいです。
お言葉に甘えてのんびり書いていきます~。

それでは。
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by garoumusica | 2018-01-09 05:00 | 稲田姫物語 | Comments(2)

目に見えない厳ついおっさんと絵描きの会話。それから大変申し訳ありませんが、本サイト内の画像、写真の無断転載・転用を禁止させていただいております。


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