稲田姫物語 妖しき剣編 その14。

はい、お久し振りの稲田姫物語です。




スサノオは岩陰から姿を現すと、己の亡骸を燃やす炎を前にする亡者達を改めて見つめた。

オロチに喰われ、とうの昔に死んだ者達。

その肉体はオロチの体内にて異形化し、オロチの死後スサノオの手によって取り出され、そして火をつけられた。

それは弔いの意を込めての事だったが、実際には黄泉へと渡る事も出来ず、また、帰る肉体を失った亡者の御霊を迷わせただけであった。



(彼らは今何を思い、何故迷うておるのか。

彼らは今何を思い、己の亡骸を見つめているのか)

スサノオは己の亡骸を見つめる彼らの心情を、自分自身に置き換え、慮る。

(いつの日にか私もこの命が尽きてこの世を去らねばならぬ日が来る。

その時に私は何を思うだろうか)

それはスサノオにとって初めて考える内容だった。

そもそも己が死ぬ可能性があるという事に気がついたのも、オロチ退治を申し出、起こり得る限りの可能性を考えた末に、ようやく思いついた程だ。

それ程までに、死とはスサノオにとって縁遠い出来事であった。

(私は何があれば迷わずに黄泉へと旅立てるだろうか)

ふとスサノオは、昨日クシナダに抱きしめられた時のあの温もりを思い出した。

あの、母の腕に抱かれているかの様な安心感を。

(あぁ、そうだ。

あの安らぎ中で息絶える事が出来たなら、私は至福のうちに黄泉へと旅立てるだろう。

きっとあのオロチの犠牲となった者達にも、その様な存在がいるはずだ。

その存在を彼らに思い出させる事が出来れば、母上の御手を煩わせずに黄泉へと送る事が出来るかもしれない)



そう思いついた瞬間、スサノオの胸に再び母の温もりが広がった。

(母上?)

スサノオは唐突に宿った温もりに違和感を覚えた。

(何か仰りたい事でもあるのだろうか…)

スサノオとイザナミの間では、スサノオとアマテラスとの間で行う様な明確な意思の疎通が出来ていなかった。

しかし、それは無理もない事だ。

スサノオとイザナミが交流し始めたのは、つい先程の事なのだから。

スサノオとアマテラスの間を繋ぐ縁が巨木の幹の様な太さだとすると、イザナミとの間に結ばれた縁は蜘蛛の糸の様なものだ。

交流を繰り返すうちにその糸は巨木の幹の様になるだろうが、一朝一夕にという訳にはいかない。

今はどちらのものともつかぬ程の、肉体・感情の微かな変化のみが頼りだ。



スサノオはイザナミのもたらした温もりの意図を探る為に、すべての感覚を胸に集中させる。

(温もりと共に微かに感じるのは、何か焦れる様な感覚だろうか…)

何故イザナミが焦れる様な感覚を送って来たのか。

スサノオはその感覚が訪れる直前に考えていた内容を手繰り寄せる。

(私が直前に考えていたのは、母上の御手を煩わせずに彼らを黄泉へと送れないだろうかという事だった。

あの感覚がそれに対する返答だとすると、母上は己を頼れと仰っているのか?)

再びスサノオの胸に温もりが広がる。

その反応にスサノオは思わず笑みをこぼしてしまった。

何故ならば、この温もりはその解釈で合っていると言いたいが為にもたらされたものだと、直感の内に理解したからだ。

(姫君といい、姉上といい、そして母上といい、私の周りのおなごの心根はなんと勇ましく、なんと心強いものか)

そう思い苦笑いを浮かべた次の瞬間、スサノオはハッと重大な事実に気がついた。

(いや、違う。私の周りに限った事ではない。

おのこはおなごから産まれ、おなごに育てられ、おなごに愛され、おなごに支えられ、おなごに子を産んでもらい、おなごの元へと還る。

そう考えると、総てのおのこは総てのおなごに頭が上がらぬではないか)

初めて気がついたその事実に、スサノオは脳天を突かれたかの様な衝撃を受けた。

そしてその衝撃には、得も言われぬ感動も含まれていた。



新たな気づきがもたらした衝撃の大きさに、暫しの間固まっていたスサノオだが、やがてその表情を引き締め前を向いた。

(私がおなごに勝るのは図体だけだ。ならばその責を果たすのみ)

スサノオは万が一の事態に備え、愛用の剣・天の十握の剣(あまのとつかのつるぎ)をしっかりと握り締めると、いよいよ燃え盛る二つの炎に向かって歩み出した。

己の為すべき責を果たす為に。

スサノオは一歩、また一歩と迷える亡者達に近づいて行く。

彼らもスサノオが近づくたびに、ひとり、またひとりとスサノオの方へと顔を向ける。

そしてその場に居る亡者達総ての視線がスサノオへと向いた時、スサノオは足を止めた。

亡者達を照らすふたつの炎は、スサノオをもまた照らしている。



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本日の内容はチャネリング初歩講座という感じでした。

今回の内容はどうしても挿絵を描きたかったのですが、羽生選手の絵に時間をとられて描く暇がありませんでした・・・。

だって時間が無いんですもん!。・゚゚ '゜(*/□\*) '゜゚゚・。

ひどいよ、スーさん!←八つ当たり。

画像はしっかりとあり後は絵にするだけなので、そのうちこっそりと投下しようと思います。

それでは本日も良い一日を~。









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by garoumusica | 2018-02-27 05:00 | 稲田姫物語 | Comments(0)

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